2019/8/21

大学生になって初めての夏休み。私は名古屋に向かっている。朝9時、今はまだ静岡を過ぎたあたり。

友達との旅行だけれど、私だけ前のりする。なぜなら、新幹線に乗るお金の余裕がなかったから。余裕がない、というのは少し語弊があるかも。おいしいものとかおみくじとかペットボトルのお茶とか、その場のテンションで欲しくなったものとか、そういうものに往復の新幹線代分つぎ込んじゃいたいのだ。

だから、はじめて青春18きっぷを買った。5回分、J R全線の普通列車普通車自由席が乗り放題。私が行きに1回分、帰りは友達も巻き込んで4回分。帰りに関しては我儘を言わせてもらった。どちらにせよ、青春18きっぷは使ってみたいなあとずっと思っていたからいい機会。

もし、男だったら、男の身体を持っていたら、迷わずヒッチハイクしていたと思う。

ヒッチハイクは小学校のときからずっとしてみたい。青春18きっぷの存在を知るより前からやってみたいことだし、大学生のうちにやりたいと思っている。ただ、残念ながら現在その勇気がない。

私はきちんと心配されながら育って、自分の身体は女で、この身体を性的に見つめたとき犯され得るものと知っている。背は高いほうで、華奢でもない、日本人女性としてはしっかりとした身体つきだけれど、同じくらいの身長の男性にも力では敵わない。ついでに私は腕力が極端にない。4つ下の妹と腕相撲をして負けた。

私の好きなインフルエンサー(女性)はヒッチハイクをして旅をしていたことがあるそうだ。彼女は特に何も問題はなく、危険な目にも遭わず旅を終えた。この国は私がヒッチハイクすることのできる国だと思う。でも、私にはまだ、自分の怯えを抱えたままそれをする強さが、怯えを抑える力が、怯えを無視してまで実行したいという意思がない。冷静になる前(?)にやってしまえればよかったのだけれど〈友達と旅行〉の前提があったし、それは難しかったかもしれない。

今のところ普通列車の旅はとても楽しい。車窓からの風景を眺めるのは好きだし、眠ってもいいように工夫(乗り換え駅の停車予定時刻5分前にバイブレーションでアラームをかけて、携帯を握りしめている)をするのもいい。学校の行き帰りに電車に乗るのと違って、精確な目的地をもっている感じがする。目的を持って名古屋に行くわけではないのに、確実にどこかに向かっている、というような自信がある。

名古屋に行ったらなにをしてみようか。

名古屋城には行こうかしら。あと、銀時計、金時計。

それから、髪ゴムの替えと櫛を忘れたから駅の近くで百円ショップを探そう。