まちがひかっている
車窓に溢れるまちを前に立ち尽くし、目頭が熱くなる。
乗換駅に停車し、乗客の動く空気に押し出されるようにして、恍惚のままホームへ飛び出る。身体が覚えているとおりに動いて、下りエスカレーターに向かうところでうしろから声をかけられる。精悍な顔立ちの男性が、なぜか私のものとそっくりなスマホを持っている。韓国土産のニセモノのルナ(セーラームーンに登場する黒猫)のスマホグリップがくっついた、黒いGoogle Pixel。クリアケースの中に、いつかの夜 川を撮ったチェキ。まぎれもなく、私のものだ……。
「……あ。すみません、ありがとうございます」
スマホを落としたことに気づくのに、一文字分の時間を要した。熱いひかりに目を細めながら、地下へ降っていく。亡霊のように。
*
自身が定めたこと、
をきちんと守ろうとおもう。どんなにか、ほしくても。今日、ちゃんとできた…!
いつか、破る自分を怯れながら。