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https://www.youtube.com/watch?v=t0IRAFyyDjI

 

叫んでいる。これは声。声。もしくは指。脳とつながった指。

 

THE TIMERS(RCサクセションも)を大学生になってから知りました。たしか、必修の講義で扱われたから。何度も聞いたことのあった曲なのにね。

水銀が降っている。案外、雨の音と大差ないもので、私は窓を開けるまで、水銀の降っていることに気がつかなかった。部屋から見える3階建てマンションの外廊下の蛍光灯と、街灯。外にある光源はおよそそれだけで、空からおちる一粒一粒が淡く反射していた。

部屋着のワンピースのまま、窓に足をかける。飛び降りて、水銀と一緒に落ちる。同じ速度で落ちていく。銀の向こう、3階建てマンションの外廊下を通った少女と目が合う。

あなたは真似しちゃだめよ

真似なんかしないわ

そう?

もう、やってきたの

これは失礼、と瞬きをする。少女も瞬きを返す。

隣家の庭を抜けて、道路に出る。銀の膜でコーティングされたアスファルト。一歩ごとに、滴が足の甲をすべる。おちる。たまに、うつくしいかたちで足の甲に滴がたまり、立ち止まるけれど、降り続くそれに押し流されて、数秒もたたぬうちにかたちは変わってしまう。

そんなことを繰り返すうちに、目的地にたどり着く。小学校のプール。柵を乗り越え、すたん、とプールサイドに着地する。ペールグリーンの網目についていた粒がはじけて、プールサイドの水たまりにぱらぱらとおち、同化する。プールのふちから、足をひたし、体を銀の中へ滑らせていく。私は簡単に浮いて、誰もいないプールを漂う。たっぷりとした毛氈のような肌触りと重み。身を沈めようとすれば、銀のプールは私をしっかりと押し返し、白く、煌々と光を放つ。緩やかな、波と波。その谷間の泡は降り続く雨に押し潰される。私は口をぽかんと開いて、それをみている。みている。口腔が満ちていく。