出社して、誰もいないうちにと煙草を吸う。狭いベランダで粛々と火をつけ、ぼんやりと裏手の道路を見下ろす。スーツを着た若い男が通って、生徒に隠れて煙草を吸う教師のような気持ちになる。
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チェック待ちで暇をしていたら(企画を考えてはいるので仕事のポーズはとっていたけれど)、先輩と新宿まで映画(バイオハザードの)を観にいくことになった。
期待よりずっと楽しかった。ラスボスのクリーチャーは微妙だったけれど、それを倒すために数多の銃火器が代わる代わる出てきて面白かった。
下水道でジルとレオンを追うクリーチャーのデザインにときめいた。細長い舌と割れた口吻。眼球はなく、視覚を持たないような描写があった。もしこの映画に登場できるならこの中の1匹がいい。
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連れ添うということを考えていた。連れ添うにはなにが必要なのか。
私の考える「この子」が「恋人」と在り続けるための方策を考える。「恋人」が何を思うかを考える。
考えて出てくるようなものでよいのか?私の考える恋物語は思考に支配されすぎている。それを突き破るようなものをみたいのに。サロメが踊るように、ジュリエットが服毒し喉を突いたように、定が陰茎を切り取ったように、ハデスが柘榴を与えたように。
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帰り道、酔ったようにふらふらと歩く。ある人からみれば私は自己陶酔者なのだろう。空想と隣り合って、常に酩酊している。やまぬ酩酊の中、息をしている。延々とつづく一人遊び。幼い頃から積み木遊びを好んでいる。城を建てては壊し、建てては壊し、時折必要に駆られてきっちりと箱にしまう。しまったときに気づく。元の数より積み木の減っていることに。しかし、また箱をひっくり返して遊び始めると積み木の数は元に戻ったりするのだ。酔っ払って数も数えられなくなっているのかもしれないけれど。