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ん、ここしばらく東西線のはしっこ空いているぞ?ああ、大学は夏休みだった。やっと気がつく。当たり前に会社に行きます、平日。

久びさに会う友達、ある程度元気そうでよかった。

飲み屋から出て、駅前の喫煙所に行く、前にコンビニに寄る。友達がiqosとハイライトレギュラーを買う。私の手元に残るのも5本ほどだったので、先日吸わせてもらって案外好きだったマルボロメンソールを買うか迷って買わない。このまま買ったら本当に喫煙者になる。

喫煙所で2本目を吸い始めた頃、友達が電話をとる。相手はこの前相席屋で知り合った人らしい。友達が繋がったままの携帯を寄越す。

頼「もしもし、はじめまして」

彼は高田馬場が最寄り駅らしく、合流して彼の友達を含めた4人で飲まないか、と言う。終電で帰るのでも構わなければ、と伝え、友達に携帯を返す。

友達「煙草、好きなの買ってきてくれるって」

頼「マルボロメンソールもらおうかな。……ライトで」

丸八で合流する。初対面の人と飲むなんて久方ぶり。いや、歓迎会も似たようなものか…?

男2人が名乗る。美容師と現場監督を職にしているらしかった。私は名乗ることすらせずににやにやしていて、友達もそれを咎めない。

「名前、なんていうの」

鍛治乃「好きに呼んでいいよ」

と馬鹿みたいに繰り返していたら"キャサリン"と名付けられる。

鍛治乃「キャサリンって長いし、キャシーとかキャスとかケイトがいいんじゃない。愛称で」

「そこまで頭まわんない(笑)学歴が…」

私はやっぱりにやにや笑うばかりで、友達が気を遣うでも場を繋ぐでもなくゆるやかに相槌をうち、話している。

柚子ハイボールをちびちび飲みながら、聞かれれば正直に話す。

「いつから彼氏いないの?」鍛治乃「2年…もう少ししたら3年」

「彼氏ほしくないの?」鍛治乃「いらないなあ」

「ゲームしない?嫌じゃなかったら」鍛治乃「んーしない。お酒好きだから。杜氏さん尊敬してるし」

未知のいきものをみる目。愉快になる。

しかしこの辺りで、

ああ、これは力なき私の持った、暴力のひとつではあるまいか

と囁かれる。そういう面もあるよね、と同意。彼ら(各々)と、私の友達と、私とでは思惑も目的も何もかもが違う。違うことを面白がって、ゆらゆらにやにやしているのは今ここでは私だけだった。

友達と男1人が煙草を吸いに出て、私ともう1人が残される。その間、観ているアニメの話をする。私はあまりアニメを観る方ではないので「なにが今は面白い?」と聞く。すると、「どんなのが好きかによるよねえ。どんなの観るの?」と返ってくる。別に勧めてほしいわけではなく、どんなものを好み、面白いと思うかを聞きたかったのだけれど。

ここ数週間はたまたまアマプラで観ている作品があったので『とつくにの少女』、『ふしぎの海のナディア』、(これは映画だけれど)『ハーモニー』と列挙する。どれも彼は知らなかったらしく会話は広がらない。本当のことを言っただけだが、些か意地悪なラインナップだよなとも感じたので、「ナディア」が庵野監督作品であることとか、『呪術廻戦』も観ようと思っていてとか言ってみたものの、暖簾に腕押し。会話は続くが弾みはしない。そんなこんなしていたら2人が帰ってくる。結局彼の観ている作品は一本も知らないままになった。こういうコミュニケーションは上手でないままだ。(接客、という仕事をしている状況下は除く。)

 

終電に一本余裕を持ったくらいの時間、3人を残し店を出る。

私は終始真面目でも積極的でもなくて、「相手の彼らはさぞ期待はずれだったろう」と思う。しかし今までの経験上、彼らは彼らなりに私を珍しがったり不思議がったりして、つまらなくはなかったろうという気もする。おそらくもう会うことはない。